大森元気の制作日誌

2018年以降の大森元気制作日誌です

BEST盤『メランコリー』が出来るまで(後編~全曲解説編)

◆マスタリングを依頼するか自分でやるか
この10年は自主制作で録りやミックスも自分でやってきたが、前作(『君の街 僕の街』)のときにはミックス・マスタリングを残像カフェ時代ぶりに礒崎氏(※)に依頼した。録りと機材は大森のセルフ環境だったにも関わらずプロの、それも一流の技術に感動したし、自分の労力も大幅に軽減できた。これからはミックスやマスタリングは人に任せたほうがクオリティはもちろん、気持ち的にも時間の使い方的にも都合がよいなと。そう決めたのだった。

今回ベスト盤なので曲をただ並べるだけだと思われがちだが―自分自身最初はそんなノリだった....自主制作の作品のため音質が揃っていなかったし、追加録音や新ミックスも増えていってマスタリングのウェイトはどんどん大きくなっていった。誰かに発注することも検討したが予算的にも時間的にも難しく、結局自分でやることにした。もうやらないと決めたのに...。

音楽的作業にとどまらず、ジャケまわり、誕生祭企画と運営、そして当日いろんな形態で演奏することなっていき、曲を覚えたり、スタジオに入ったり、、文字通り怒涛の日々になっていったのでした。

※礒崎誠二
...残像カフェ時代に半分以上のアルバムを手掛けたレコーディングエンジニア。楽器テック的役割や、プロデューサー的役割も担当して頂き、残像カフェチームになくてはならない人物。主な仕事は遠藤賢司HARCOGOMES THE HITMANコモンビルkimono my house岩見十夢、TOMMY THE GREAT、パウンチホイール、狐の会、南風 等々。 現在はBillboard JAPAN チャート・ディレクター、株式会社阪神コンテンツリンク ミュージックエンタテインメント部 東京クラブ 統括マネージャーとして活躍中。

tower.jp

上記リンクは「COA RECORDS アンソロジー」発売当時のニュース記事。このほとんどのアーティストの作品が礒崎氏によるもの。

 

◆全曲レコーディング/マスタリング解説
途中から下書きを書いていなかったし、いちいち調べるのも不毛なので、日付順ではなく曲ごとに書いていこうと思います(前記事と一部かぶっているところもありますがご了承を...)。

 1.小梅ちゃん(2005×2018)
2005年のデモをベースに追加録音。リズム隊に乗っかる“ウワモノ”がアコギ2本のみだったので、ピアノとオルガンを追加で録音した。ドラムはデモのものを活かしつつオカズとシンバル関係を打ち込みにて追加。

2010~13年、バンド「花と路地」で頻繁に演奏していたがそのときはバイオリンやペダルスチールなど豪華な音像だった。今回はその印象は引きずらずに追加録音は以上とした。

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第2期花と路地・初ライブから2曲。「小梅ちゃん」はソロや残像カフェ時代にも演奏していたが、バイオリン入りの花と路地バージョンはこのとき初めて披露した。ペダルスチール/ストリングベンダーギターの渡瀬賢吾はまだ未加入。


2.Noah(ノア) -2018 MIX-
2014年、打ち込み/EDMマイブームで作成して配信&ライブ会場のみで発売した後、新アルバムのためにいろいろ変えて新ミックスを作っていたが、アルバムは保留となり未発表バージョンとなった。これをそのまま入れてもよかったが、さらにいじって2018最新ミックスを作成。

四つ打ちの楽曲はどうしても流行り廃りがあるからすぐ時代遅れ感が出てしまうし、専門的に聴いていたわけではないから仮に最新形を取り入れようとしても中途半端になってしまう。作った当時はあえてマイブームの躁の感じで突進しようと。逆に今回は極力冷静になるよう気をつけながら作った。

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打ち込みマイブームの頃の初ライブ・ダイジェスト。「Noah」もラストに演奏している。


3.下北沢
アルバムバージョンと同じ。音量のみ調整。ライブではお馴染みだが、今回改めて聴き直してみてアコギ2本とピアノの絡みなど再発見などあり新鮮に聴けた。

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下北沢のMV。かつての下北名物、小田急開かずの踏切と旧ホーム最後の日の映像を収めている。


4.拝啓、君は元気ですか?
既発バージョンとミックスは同じだが、音質・音圧をけっこう調整した。これもソロライブ定番曲だが、聴き直すと様々な発見が。リズムボックスとアコギの上にマンドリンメロディオン、フォーク的エレキ、コーラス。カントリーフォークの王道とも言えるアレンジは当時水を得た魚のように楽しみながら作っていった記憶が。1人でやることが多いからこのアレンジでもいつか出来たら楽しいだろうな。


5.梅雨入りのニュース
こちらも既発バージョンとミックスは同じで、音質・音圧を調整。

もともとは2003年頃のデモに調整を加えて2009年にリリースしたもの。今回のベストは、この10年(「自主レーベル10周年」&「自分の30代」)という縛りで選曲したが、この曲のようにもともとは20代に作ったという曲も何曲かある。(ちゃんと発売したのが30代だからよしとした)

中でもこの曲は録り直しをしていないので、音質やアレンジだけでなく、歌い方や声が違っていて非常に興味深い。いつか録り直すことにも興味はあるが、このデモにあふれている魅力のほとんどは再現できないだろう。


6.雨の中、女の子
既発バージョンと同じ。音量のみ調整。

シングルらしくない曲だが個人的に好きだからというのと、バラードやミドルテンポが多いなかでジャズ寄りのワルツということで、リズム的にも幅が出るからいいかなと思った。そして演奏も録れ音もとてもよくて、そんな3つの理由で収録することにした。ボーカルとベース(大森)は、キャリア中ベストかも知れない。岡田梨沙・谷口雄の今や引っ張りだこの2人の演奏も気持ちよい。


7.まち
既発バージョンと同じ。音量のみ調整。自分で叩いたドラムは恥ずかしいが...笑 渡瀬君(渡瀬賢吾)のペダルスチール等、ほかの演奏がとても良いので尚更...苦笑。こういう泣きのバラードは最近作っていないのでまた作りたいなと思っている。


8.rain rain rain
ソロ名義第1弾マキシのリード曲だった曲だが、長らく廃盤になっていた曲。ドラム・ベースレスながら、アコギとコーラスが多重に重なり合っている。今回は既発バージョンと同じミックスだが、音質をかなりいじってみた。

youtu.beソロ第一弾シングル「rain rain rain」。トイカメラ風のMVも自主制作した。


9.チェルシー
こちらは中期の残像カフェ(w/松木俊郎/鈴木健太/萩原拓/かちむつみ)でもやっていた曲。この名プレイヤー達による当時のライブテイク(QuipMagazine特典として配布済)も魅力的だったが、迷った末、マキシ収録の宅録バージョンを収録することにした。

既発ミックスのまま、音質を調整。ドラムは打ち込みだが、レゲエ調のベース(大森担当)がなかなか今聴いてもなかなか新鮮で、そのベースが気持ちよく聴こえるように低音を太めにした。


10.アイスキャンディー
チェルシーと同じマキシのタイトル曲。演奏・アレンジ・ミックスともにとても気に入っていて 音量・音圧を少々整えただけで収録。

何度か書いているが、趣味で作ったようなバラードだけどとても人気が高いし、自分でも気に入っている。不思議な曲だ。

いまいち歌詞のストーリーが分からなくて当時録音するまでに何度も書き直したけど、結局初期の歌詞に戻った。そして今はそれがいいということがすごくわかる。

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ソロ第2弾シングル「アイスキャンディー」のMV。髪も長く、人生でこのときだけ何故かヒゲありがレア。


11.花咲く路地(2010×2018)
ギター1本の指びき弾き語りバージョンに、今回ピアノ・メロディオン・チューバ(鍵盤で代用)を追加録音。ピアノは意識的に動き回るような音数で、セッションしているような雰囲気を狙った。

ベース・ドラムやエレキギターなどの入ったバンドバージョンは、かつて花と路地で録音していて、それが活動休止のためお蔵入りになってしまった(ライブ盤では複数バージョン入手可能)。悔しいし、その決断をしたのも自分で、当時は前進のためと思っていたし、そうするしかなかった部分も確かにあった。けど失ったものの大きさは何年経っても消えないし、それどころか大きくなっていく。そんなネガティブなことばかり言っていても仕方がないから、この喪失感や悔しさを前進のためのバネにしなければと思う。この曲もいつかバンドバージョンで録る日が来るだろうか。

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花と路地のライブから。楽しそう、そしてかっこいい。



12.とおりすぎた街
Noah同様、打ち込みマイブームのときに作った曲。四つ打ちでない、こういう曲のほうが時間経過での色あせが少ないように思える。とは言え、これがダサいのかどうなのか、自分では勉強不足で通常のフォークやロックよりも判断力が劣ることは否めないから、そのリスクは今回ちょっと思った。

今回は発売日ありきの制作で、時間も限られていたから既発バージョンのまま、音量のみ調整し収録。


13.インマイライフ
既発バージョンと同じで音量のみ調整。急逝した友人と、愛憎混じった故郷に向けた歌。

拓郎meetsジョージハリスン的ウォールオブサウンドでたくさんの楽器を入れた曲。その解決のためかは不明だが上から下までレンジが広い(磯崎氏のミックス)。ベスト盤に入れるにあたり、他の曲と似たようなレンジに音質を寄せてみたのだが、このミックスの良さが台無しになってしまったのでいじらないことにした。


14.日曜日月曜日
これも花と路地時代に演奏していた人気曲だが打ち込みをメインにしたソロバージョンを収録。配信とライブ会場のみで発売済みのバージョンを使用(音量調整のみ行なった)。
頓挫した花と路地のレコーディングだったが、そのときに録っていたペダルスチール(渡瀬賢吾)とバンジョー(アダチヨウスケ)を、本人了承のもとこのバージョンに移植して使用している。

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静止画ですが、花と路地バージョンの初披露時のライブ録音。



15.ひとりごと
『君の街 僕の街』に収録済の曲だが、こちらはあえて礒崎氏に渡す前の録音を、自分で再調整して今回は収録することにした。エレキ3本のアルペジオ曲だけど、なんとなく弾き語りっぽい、こじんまりとした雰囲気にしたかったので。

 

 

◆歌詞カード/ジャケまわり
ジャケは妻と相談しつついくつか案を出してみたが、前週に出した案を進める。 

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ジャケのラフ案。ビートルズのパストマスターズ1と2みたいだな(笑)。この他のデザイン案もあったけど、内容に合っているということで(地味だが)右のものを採用した。

ジャケの形態についてもいくつか検討するが、前作と同じ方法を取ることにした。無地の紙ジャケを購入し、シール用紙にデザイン部分を印刷して自分で貼っていく。予算を考えるとこの方法か、プラケースか、もっとラフなデモっぽいものか、そのあたりの選択肢になり、紙ジャケ案に決める。シール印刷も予算上、印刷に出さずにキンコーズで自ら。

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歌詞カードも前回同様、A3判を自分で折って紙ジャケに封入する形。恒例となっているコラム・ライナーノーツを掲載したものに決定。書くこと自体は好きなのだが、執筆、推敲、デザイン等にかなり時間を取られることに...。

というわけで完成しました。自主制作/CDRでやるようになって以来毎度のことだが発売日当日の朝までかかってしまった。これもやめたいと思っているのだけど、、(涙)。ひとまず完成してよかった。残る時間で出来る限り製造してライブへ。
ライブの模様はこちらに書いています。
大感謝祭までのはなし - 日々の残像V〜北鎌倉篇〜
大感謝祭をふりかえる~昼の部篇~ - 日々の残像V〜北鎌倉篇〜
大感謝祭をふりかえる~宵の部編~ - 日々の残像V〜北鎌倉篇〜

ただでさえ盛りだくさんだったのに徹夜明けのテンションで、もう夢の中みたいな一日でしたね。お客さんにも出演者のみんなにも楽しんでもらえたようで、本当によかった。。

ライブが減ったり、鎌倉に引っ越したりで、少し「忘れられていないか?」感を抱きながらしばらく活動していたけれど、みんなの気持ちが物凄く伝わってきて本当にあったかかったし、打ち上げでみんな酔っ払って踊りまくってるのを見て、もうこれ以上の大成功はないなと。感無量になってしまいました。

さあ、ベスト盤が完成したので、止まっていた新譜に戻ります。

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