大森元気/残像のブーケの制作日誌

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ダブルトラックとシングルトラック~友人のライブを観て悶々とする(2019.10.3~10.7)

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今回はダブルトラックの話です。ここを読んでくれている人には説明不要かも知れませんが...。「ダブルトラック/ダブリング」、いわゆる”重ね“の手法。これは同じフレーズを2回(以上)録音して再生するレコーディング手法のこと。ボーカルやコーラスで使う場合が多いです。

(あとはオーケストラなども、同じ楽器・同じフレーズを演奏する人が何人もいるのである意味リアルタイムの重ねということになります)

効果としては音が太くなったり、微妙なピッチ(音程)の違いにより揺らぎ効果──エフェクターのコーラスやフランジャーのような効果──が得られます。あとはピッチが悪いときにマシに聴こえたりします(苦笑)。

タイミングや音程が違いすぎると単に複数の人で合唱したのと同じ状態になってしまうので、元となるテイクに似せて歌う必要があります。逆に、本当に歌が上手で完全に同じピッチに出来てしまうような人は音が共鳴しすぎて気持ち悪くなることもあるようです(ビューティフルハミングバードのみっちゃんの歌がそんな状態になった現場にいたことがあります)。

余談になりますが、60年代、同じ歌を2度歌うのを面倒がったジョンレノンの要望でエンジニア・ケン=タウンゼントがADT(Artificial Double Tracking または Automatic Double Tracking )という機材を発明したという逸話があります。仕組みは2台のテープを利用して云々...wiki参照してください笑。


さて日誌に移ります。

2019.10.3 (木)
「リフレイン」エレキギター2本のうち1本を某氏に頼みたくて1年近く調整していた。オファーしたときすぐ快諾してくれていたがお互いのタイミングが合わずで断念。自分で弾くか、誰かに頼むか、検討を始める。


10.4 (金)・5 (土)
「恋は終わってしまった」Vo編集
シングルトラック、シングル+ダブルの混在の2パターン作ってみる。

男性目線・女性目線が交互に出てくる歌詞なので、男性=シングル、女性=ダブルというアイデア。全編ダブルはこの日は作らず。


10.4 (金)・6 (日)
◆友人のライブを観に行く
この2日間、久しぶりに友人のライブを観に行った。20代の頃は毎日のように友人のライブを観ていたがライブを観に行くのは1年近くぶり。1年前は“夢見る港”のレコ発だった。そしてこの日も夢見る港を見た。ハナカタマサキ君にも久しぶりに会えてよかった(以前観たときはバンドだったが今回のクラシックみたいなプログレみたいなギター弾き語りもかっこよかった)

そしてオオニシノブヒサ君という人のバンド(「オオニシノブヒサとふやけたやつら」)を初めて観た。かつて“花と路地”で一緒だったメンバーがなんと3人もいて、曲調も似てはいないけどちょっと共通するようなことがいくつもあった。とてもよくて、そして色々と思ってしまった。

ネガティブな言い方をすると、メンバーのよさが発揮され、バンドとしても息が合っていたから、逆説的に当時の自分の至らなさを痛感することになった。発起人/リーダーとしていろいろ頑張ってきたつもりだったけど空回りしたり、結局はみんなを振り回したり、そして脱退と休止の結末を辿ってしまった。自分でない人が仕切るとこんなにまとまるんだ...という、自己嫌悪まではいかないけれど複雑な思い(苦笑)。

もちろんポジティブな言い方をすれば、僕が惚れ込んだミュージシャン達、やっぱりかっこいいぜ!ということになる。こんなメンバーで活動できて本当によかったし自分は幸運だったと心から思う。オオニシ君バンド以外でもいろんな場所で活躍しているメンバー達。本当に尊敬している。みんなの活躍は嫉妬よりも誇らしい気分が圧倒的に勝る。これは強がりではない。

1日あけて日曜日はソフテロのレコ発だった。新譜の曲はポップにからっと吹っ切れていてとても潔かったし、昔の曲はセンチメンタルでこれもとてもよかった。バンドのメンバーも息があっていた。歳も同じ、録音時期や録った人(足立君)も同じ、1人ユニットでバンド編成というのも同じ。いろいろと刺激を受けまくった。

そしてタイバンのカーネーション直枝さんの弾き語り。(ソフテロ君のもっとも影響を受けたヒーローなのだそうで、ソフテロ曲の随所にオマージュが隠れているのだそうだ)。

直枝さんの弾き語りは「凄み」という言葉が一番しっくりくるようなステージだった。「どんなことが起こるだろう」という歌詞はよくあるフレーズかも知れないが、それに続くのが「何があったら気が済むだろう」というのはめちゃくちゃ素敵だなと思った。

2つのライブを観た帰り。自分の録音中の曲を並べて聴く。みんなの頑張りや輝いている姿を見て刺激を受けた。遊んでいるわけではないのだが、、早く完成させたいという気持ちが強まる。


◆久しぶりに聴いたサニーデイ・サービス

ライブへの移動中にサニーデイサービスを久しぶりに聴いてみた。何度も書いているけど、僕がデビューの頃、雑誌やネットでパクリと言われすぎて聴くのを避けてしまい、そのまま時が流れてしまった。けれど最近はときどきは聴くようになってきていた。

この日は記事冒頭のVoダブルトラックの件もありその研究のために聴いてみたというのもある。

サニーデイの場合、何かで読んだけれどボーカル含めて全員一緒に録音していたのじゃなかったか?(打ち込み曲や宅録曲は別としても。)ダブルのトラックの曲がときどきあるが、きっと1本はライブみたいにせーので録ってもう1本を補強として重ねているんじゃないかな。歌も一緒に録るなんて僕はできないなあ、、修行が足りない、、、


2019.10.7 (月)
朝。
「恋は終わってしまった」ボーカル編集。
昨日は(a)シングルトラック、(b)シングル/ダブル混在の2パターンを作ったが、新たに(c)全編ダブルのバージョンを作る。

移動中聴き比べ。(b)シングル/ダブル混在Verは、男女の切り替わりが分かりやすいとは言えやはり不自然と思えた。歌詞をじっくり聴くなら違いが分かってよいが、歌詞を聴かない聴き方もあるわけで、その場合は不自然な感じがしてしまう。


◆ダブルとシングル、アルバム全体のバランス

ほかの曲含めアルバム全体としてダブルとシングルの割合を迷っている。歌い癖とか表情のつけ方をこの歌はうまく出せたと思うので、この曲はシングルでいきたい気持ちがある。またシングルのほうが、せーので合わせた感じも演出できるのでバンドっぽいこの曲に合っていると思う。

ただ、ダブルにしたほうが声が太く聴こえるのと、悪い意味での「直球感」、暑苦しさみたいなものが減ることでちょっとポップになるような気もする。(バンド時代のような、大森元気本人が見えすぎない感じがいいと今回は思っているので)


というわけでどちらを選択するか、引き続き検討中。
折衷案として、ダブル成分を少なめにして、ぱっと聴いた感じはシングルに聴こえる程度のダブルにするというのは良いかもしれない。