大森元気/残像のブーケの制作日誌

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コーラスを分解して再構築する (2019.10.23-10.24)

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以前も載せた写真なので今回はカラーにしてみます

夏の時点でほぼミックスが完成していた「旅するように歌うのだ」。しかしコーラスだけはどうにも糸口が見つからずにいた。すでに録音は済んでいてテイク自体は素晴らしいのだが(写真の4人に歌ってもらった)、混ぜてみるとうまく馴染まないのだ。

◆4声コーラスの問題点と考えられる理由
【問題点】
●小さめにミックスすると箇所によって誰かの声が聞こえない。
●そういうものだと割り切るとして、いい意味での──ダンゴにもならないし、聞かせたいフレーズがわかりにくく、ばらけてしまう印象。
●かと言って音量を上げてみると、今度は他の楽器を邪魔してバランス的におかしくなる。

【理由】
●4人の声質がバラバラ。もっともコーラスだけで聴くと最高なのでこれは問題ではなく魅力と考えるべき。
●アレンジの問題。上から下まで音域が広く他の楽器にかぶるとき聞こえにくくなる。
●これもアレンジの問題で、フレーズに凝ってしまったことが仇(あだ)となり、細部まで聴こえないと成立しないラインになってしまっている。
●楽器類が多いのも原因。もっと少なければ現状でも問題ないのだと思う。

(コンプ・イコライザー・その他もろもろ処理は色々アダチ君のほうでやってくれている)

アダチ君と何度かやりとりしていたがなかなか思うようにいかなかったのでいったん僕のほうで見直すことにした。

スケジュール的・予算的に、(みんなの気持ち的を考えても) 3度めの録りという選択肢はなかった。そこで録音済みのコーラスを解体して再構築するという手段に。



◆分解、再構築、定位の変更
2019.10.23 (水)
データを受け取り、早速作業。

(1)フレーズの再構築。
前述のとおり、声の素材を用いてフレーズを再構築していく。時には別のところから音を持ってきたり、なかったフレーズを作り出したりということもありとする。(ただし音程に関してはドをレにするような加工はしなかった)

(2)定位を変更。
通常多重コーラスは左右に振って広がりを出すことが多いと思うが、これをまとめて全部を片側(暫定 右)に寄せてみた。これはビートルズなど録音トラックが少なかった時代には見られる手法だがまとまりが出て好きなのだ。

(3)ディレイ効果
1つのフレーズにつき2テイクずつ歌ってもらっているので(ダブリング用)、右にまとめたものと同じフレーズを逆側(暫定 左)にまとめる。

そして少し小さめにし、タイミングを少し遅らせる。「ダブリング」というより「ディレイ」的な役割。こうすると左右がより分離するし、広がりも出る。また左右に振っても質感が似過ぎていると真ん中から聞こえてしまうがあるがこれも回避できる。


図で表すとこんな感じ

▼当初の定位

図A
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▼変更後の定位

図B
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もっとも当初の定位=一般的だと思っていたけど、ネットで調べてみるとそうでもないようだ。こちらのサイトでは、音程順に「扇」の形にするのがよいと書いてある。
ハモリやコーラスをミックスする時の基本とコツ4選 | ボーカルMix・パラMix オンラインMixing専門サイト-MONO-


図にするとこういうことかな?(扇の形は逆になってしまうが)

図C
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今回は楽器も多いこともありBのパターンで行こうと思うが、今後の制作ではCのパターンも試してみたいと思う。


◆もっと減らすという選択肢
10.24 (木)
同曲つづき。
フレーズ模索とあわせて検討事項が。この曲は単調でやや長い曲だが、前半はコーラスが無く、後半になり出てくる。急に出てきたと思ったらこれでもかとドラマチックに展開するので、ある意味「上モノの主役」みたいになってしまっていた。これでよいのか?という疑問。ほかにも楽器があるし、前半と後半の落差、流れ的にどうなの?と。


それを踏まえコーラスをワンブロックまるごとミュートしてみる。(ミュートする場所を変えて2種類作成)。

今までのものを聴き慣れてしまっているので今は寂しく感じるが、減らして成立するのならそのほうがよいと思う。客観視できるまで数日聴いてみよう。


◆コーラスアレンジの難しさ
上でも書いた通り、一度春に歌ってもらった後、夏、フレーズを変えて歌い直してもらった経緯がある。そのときにずいぶん地味にしたつもりでいたが、まだまだ足りなかった。

春Verも夏Verも作ったといにはどちらも納得のいくアレンジで、テイクも良いものだったが、歌モノのコーラスはコーラスだけで聴いて最高でもダメなのだなあ。

・和音的なこと
・全体の流れ
・歌との関係
・楽器類との住み分け(フレーズ・音域・全体のパート数)

そんなことに気を配りながら、とにかく詰め込み過ぎには注意。懲りすぎてもいけないことを痛感した。

多重コーラスって自分の中では得意分野で、あがたさんの仕事をはじめとして対外的にも自分のなかで胸を張れる要素としてやってきているが、まだまだ勉強が足りないなぁ。奥が深い。

コーラスの試行錯誤は次記事まで続きます。